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遅い夕食

遅い仕事を終え、寝静まる我が家。
遅い夕食の時間だが、箸を動かす音で
快適に、レム睡眠とノンレム睡眠を繰り返す家族を
起こすわけにはいかない。
 仕方ない、外食にするか。
お腹も減っているので「近場で簡単に済まそう」と、
心に問えヴぁ、頷いてくれる。
 
 車は怪鳥に走る。
そして一番近いレストランを探す。
やはり深夜だ、なかなかお店は開いてはいない。
深緑の山々と、黄緑の山々に誘われ、
白色のLED灯のトンネルと
オレンジ色のナトリウム灯のトンネルをいくつか抜けると、
薄い霧の中でヒッチハイクをしている深夜0時を
助手席に乗せる。
 
 長い長い下り坂に吸い込まれると
左手に黄色いパトランプと紫色の光が
右足のアクセルを離し、ブレーキを踏ませる。
 
 おっと、ここは気が付けヴぁ、
兵庫県県北の名店「コインスナック・ふじ様」ではないか。
おっと、入口のテントが新しくなっている。
これは新装大開店だ。
 
 お店の中は今日も素敵だ。
この店の絶対王者は言わずと知れた
富士電機様の麺類自販機。
脇を固める、重鎮・カップ麺自販機も貫禄充分だ。
 
 うどん自販機に、ポケットの中で温めておいた
3枚の100円玉を入れる。
カウントダウンが始まると同時に、
おつりの10円玉が落ちてくる。
デジタルのカウントダウンが一桁になるころ、
もう心は、ドキドキからトキめきに変わり最高潮を迎える。
 
 そして、無口な料理長は、今日も無言で
夏なのに雪のように綺麗な丼を
手渡してくれる。
 
 今日は贅沢に、リクライニングシートで食べるとしよう。
この椅子に座ると、気分はまるでグリーン車だ。
 自販機に埋め込まれている「はし・やくみ」BOXから
割り箸と七味唐辛子を取り出す。
 澄んだ心のように真っ白な麺は、
今日も暖かく柔らかい。
 
 アツアツの御出汁は少し甘く優しく
今日も旅人の心を中の疲れまで
優しく取り除いてくれる。
 1枚のカマボコはトロロ昆布の傍から離れず
一緒に口に入れると、二つの海の幸の香りがたまらない。
 いつも三角の油揚げが、今日は四角だ。
ゆっくりと口に入れる。
 おおっと、いつもより柔らかく甘く深いこの味わい、
これを味あわせたく、料理長は私を呼んだのかもしれない。
 
 丼の底が見えてきた。
そろそろ終焉かと思った瞬間、
もう一枚のカマボコが顔を出す。
これには驚いた。相変わらず心憎い演出だ。
 
 食べ終われば、
その場から動けなくなるような
私がついた溜息が私を包み、
私だけの贅沢な時間と空間も
私を包み込む順番を待っている。
美味しかった
後ろ髪を引かれながら帰路へ。
ルームミラーで見えなくなるまで
黄色と紫色の光は
私に手を振ってくれる。

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